女子高生喧嘩倶楽部 ~ その3
「ほらっ、早く始めなよ!」「勝負がつくまで帰れないよ!」って周りからヤジみたいなのが飛んでくると、玲子さんはわたしに近づいてきて「○○高校1年生の岸本真希ちゃんだよね?わたしと喧嘩してくれるまで帰さないよ!」って言いながら、いきなりわたしのほっぺたを引っ叩いてきた。
女の子が自慢できる話じゃないけど、クラスのみんなから言われるとおり、わたしも気が強い方だし、中学までは地元のチームでサッカーをやってたから運動神経には自信があったからって訳でもないんだけど、無意識のうちに玲子さんの横っ面を引っ叩き返したら、再び玲子さんの右手がほっぺ目掛けて飛んできたんだけど、その手はギュッと握り締めた拳骨だった。
初めて殴られた。
しかも、今日、初めて会ったヒトに。
今までは喧嘩といっても口喧嘩くらいしかした事ないし、勿論ボクシングや空手なんかやった事が無いんで、殴られた事なんか無かったけど、初対面といって良いヒトから殴られた。
万が一にも、これがボクシングや空手の試合だったら、初対面のヒトに殴られることはあるだろうけど、今は喧嘩の真っ最中。
でも、喧嘩ってそれなりの理由や相手との関係があって成り立つものなんじゃない?
今朝の電車の件で言えば、『ガン』を飛ばしてきたのは玲子さんの方なんで、わたしが喧嘩を売ることはあるかもしれないけど、何で『ガン』を飛ばしてきた方が喧嘩を売ってきたの?
わたし、なんか悪い事した?
電車の中で試験勉強してただけだよ?
それなのにわたしが殴られた。
このわたしが・・
生まれて初めて殴られた事で、殴られた痛みよりも殴られた事に対するショックの方が大きくて、頭の中がゴチャゴチャになっていたら、不覚にも人気ロボットアニメの有名な台詞が何の脈略もなしに浮かんでしまって、無意識のうちに頬が緩んでしまった。
すると玲子さんは嬉しそうな顔で「真希ちゃんも喧嘩がしたいんでしょ?」って言いながらわたしの髪を掴もうと手を伸ばしてきた。
顔を殴られ髪の毛を掴まれて、何故だか吹っ切れたような気持ちになったんで、わたしも玲子さんの顔面にパンチを飛ばした。
すると玲子さんは、『そんなのお見通しだよ』と言わんばかりの顔でスッと顔を避けると、再びわたしの顔を殴りつけてきた。
さっきのとは比べ物にならないくらい力強いパンチに、わたしは情けない悲鳴を上げてひっくり返ってしまった。
すると追い討ちを掛けるように玲子さんの蹴りが飛んできたんで、仰向けのまま蹴り返すように防戦しているうちに、ある考えが頭に浮かんできた。
玲子さんは蹴りを入れようと、何度も襲い掛かってくるけど、何故か一発もヒットしない。
蹴り=キックだったら、わたしだって自信がある。
わたしだったら、対象が動いていても正確な蹴りを入れられる。
わたしは寝転がったまま蹴りを入れる素振りで牽制しながらゴロゴロっとマットの端まで転がって素早く立ち上がると、マットの中央に向かって慎重に進み出た。
そして、玲子さんが再びわたしの髪の毛を掴もうと進み出てきたところで、玲子さんの軸足にサイドボレーのような蹴りを叩き込んだ。
すると玲子さんは「きゃぁぁっ」って悲鳴を上げながらひっくり返ったんで、追い討ちを掛けようとしたけど、さっきわたしがやったみたいに牽制するような格好で何度も脚を突き出してきた。
すると「玲子、何やってんのよ!」「一発でやられてんじゃないよ!」って周りを取り囲んでいる女子高生たちがヤジを飛ばしてきて、(ヤバい、玲子さんに勝っても、この人たちがわたしを大人しく帰らせてくれないかも)って不安になっていたら、「真希ちゃん、追い込め!」ってわたしに向かって声援を送ってくれる人もいて、混乱しているうちに玲子さんが起き上がるのをみすみす見逃していた。
(もう、こうなったら成るようになれ)って感じで、再び玲子さんの太腿に狙いを定めて蹴りを入れようと思った瞬間、玲子さんは凄い勢いで飛び掛ってきたかと思うと、そのままわたし髪を掴んで押し倒してきたので、わたしも玲子さんの髪を掴んで応戦。
互いに髪を掴みながらマットの上をゴロゴロと転がっていたら、いつの間にかマウントポジションをとられていた。
すかさずわたしも、玲子さんの上に跨るようにマウントポジションを取ったが、いつの間にか返されて、ガンガンと頭をマットに打ちつけられていた。
だからわたしも、お返しとばかりに玲子さんをホールドしながら、彼女の頭を何度も何度もマットに打ちつけた。
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カテゴリ : 女子高生喧嘩倶楽部